長期脱炭素電源オークションの創設目的と過去の入札実績
2026年5月13日に開催された第1回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会電力安定供給ワーキンググループにおいて、長期脱炭素電源オークションのこれまでの実績と来年1月に予定される第4回入札に向けた制度見直しの議論が行われました。
近年、既存電源の退出や新規投資の停滞により供給力が低下し、電力需給のひっ迫や卸市場価格の高騰が発生しています。
長期脱炭素電源オークションは、巨額の初期投資が必要な脱炭素電源に対して原則20年間の固定費水準の容量収入を保証し、投資判断に必要な長期的な収入の予見可能性を高める制度です。市場等からの収益の約9割を還付する仕組みをとっており、2023年度から入札が開始されました。
第1回および第2回の入札では、計画的な脱炭素電源の投資支援とともに、短期的な需給ひっ迫への緊急対応を目的とした液化天然ガス火力の双方が募集され、それぞれ設定された募集量に対して順調に落札が進められてきました。
第3回入札における脱炭素電源および液化天然ガス火力の落札状況
本会議では2026年1月に実施された第3回入札の約定結果が報告されました。
脱炭素電源の募集量500万キロワットに対して約610万キロワットの応札がありましたが、約定量は約426万キロワットにとどまり、約73万キロワットの未達が生じました。内訳を見ると、蓄電池および揚水発電に対する事業者の関心が極めて高く、募集上限80万キロワットに対して4倍超となる約355万キロワットの応札が殺到しました。あらかじめ定められたルールに基づき上限を超える落札が行われ、リチウムイオン蓄電池および揚水リプレース等で約81万キロワット、それ以外の蓄電池および揚水新設等で約88万キロワットが落札されました。
また、募集上限のない新設脱炭素電源や、第2回から対象に追加された既設原発の安全対策投資、水素アンモニア等を利用する脱炭素火力も全件が落札されています。一方、液化天然ガス火力については、募集量293万キロワットに対して約475万キロワットの応札があり、約303万キロワットが落札される結果となりました。
第3回入札の約定総額と還付制度を踏まえた実質的な費用負担
落札された電源の個別の価格は経営情報保護の観点から非公表とされていますが、電源種別の約定総額等の詳細が公表されました。脱炭素電源全体の約定総額は年間4748億円、液化天然ガス火力の約定総額は年間1444億円となり、対象容量に対する約定総額は合計で年間6192億円に達しました。
しかしながら、本制度では市場や相対取引で得られた収益の約9割が還付される仕組みとなっているため、過去の卸市場価格や非化石価値取引市場の価格をベースに試算した還付控除後の実質的な約定総額は、脱炭素電源で年間3420億円、液化天然ガス火力で年間810億円となります。
また、加重平均約定価格については、脱炭素電源が1キロワットあたり年間11.1万円、液化天然ガス火力が同4.6万円となり、それぞれあらかじめ設定されていた上限価格の約5割半から8割程度の水準に収まっていることが確認されました。
第4回入札に向けた二酸化炭素回収・貯留設備の回収率定義の見直し
来年1月に予定されている第4回入札に向けては、二酸化炭素を回収して貯留する技術であるCCSを付加した火力発電に関する制度の見直しが議論されました。

水素やアンモニアの混焼火力は発電設備のバーナーを直接改造するため発電量と脱炭素化の割合が連動しますが、CCS付火力は発電設備と分離回収設備が別々に存在するため、設備利用率が連動しないという技術的な特性があります。
現在の制度では、可変費支援の対象となる範囲を定格出力時の回収率を基準として設定しているため、発電所の出力が低下した場合に支援対象となる電力量も連動して減少し、結果として分離回収設備の能力を最大限に活用できないという課題が案件形成の過程で判明しました。
このため、回収率の定義を定格出力時の割合から、想定年間二酸化炭素発生量に対する想定年間二酸化炭素回収量の割合という実績ベースの考え方へと見直す案が提示されました。
さらに敷地条件等の制約を考慮し、最低回収率を水素やアンモニアと同水準の20パーセント以上としつつ、将来の完全な脱炭素化に向けたロードマップの提出を求める方針が示され、実態に即した投資環境の整備に向けた具体的な検討が進められています。
出典:総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力安定供給ワーキンググループ(第1回)