英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は、2024年12月、容量市場におけるConsumer-led Flexibility(消費者主導型柔軟性)に関する意見募集を発表しました。住宅用蓄電池やEV、ヒートポンプ、需要応答(DSR)などの分散型リソースが急速に普及するなか、需給逼迫時に実際に応答できる供給力としてどのように評価・検証するかについて制度見直しを進めるものです。
英国の容量市場は、将来の電力供給力を確保するための制度として運用されています。従来は大型発電所が中心でしたが、近年は需要家側のリソースを活用するDemand Side Response(DSR)の参加が拡大しています。政府はConsumer-led Flexibilityを、需要家自身または第三者アグリゲーターが電力需要を制御し、系統運用に貢献する仕組みと位置付けています。
分散型リソースの大量導入で制度運営に新たな課題
現在の制度では、多数の小規模設備を束ねて市場参加するDSR Capacity Market Unit(CMU)が認められています。住宅用蓄電池やEVを数百台から数千台規模で統合し、一つの調整力として容量市場へ参加することが可能です。
一方で、こうした分散型リソースの拡大に伴い、設備構成の頻繁な変更や管理負荷の増大が課題となっています。政府は、家庭用蓄電池やEVなどの低容量設備が大量に参加することで、登録設備の追跡や供給力確認にかかる事務負担が増加していると説明しています。また、ポートフォリオ全体として契約容量を維持できるかどうかを継続的に確認する必要性も指摘しています。
ベースライン手法の見直しを検討
英国の容量市場では、DSR事業者はベースライン需要量を設定し、需給逼迫時にどれだけ需要削減を実現したかを評価しています。System Stress Eventと呼ばれる需給逼迫イベント発生時には、通常時の需要と実際の需要との差分を計測し、提供した調整力を算定します。
しかし政府は、現行のベースライン手法について、実態以上の削減能力を示す可能性があることを課題として挙げています。特定の時間帯を利用したベースライン設定によって実際より高い応答能力を示せるケースも想定されるため、より適切な算定方法や他市場との整合性について検討を進めています。
こうした議論は、将来的に住宅用蓄電池やEVが大規模なVPP(Virtual Power Plant)として参加する際の信頼性確保にも直結するものです。
実際に応答できることを重視する方向へ
英国では発電所に対して建設進捗を確認するマイルストーン制度が設けられていますが、DSRについては代わりにDSR Testが実施されています。これは、契約した需要削減量や供給力を実際に提供できるかを確認する試験です。
さらに2025年の制度改正では、DSR Test Certificateを期限までに提出できない事業者に対し、1MW当たり5,000ポンドのTermination Feeを適用する方針も示されました。設備を保有しているだけでなく、需給逼迫時に実際に応答できることを重視する考え方が明確になっています。
英国の制度改革は、分散型エネルギーリソースの導入拡大を進めながらも、系統運用上必要となる供給力の信頼性を維持することを目的としています。今後、住宅用蓄電池やEVを活用したVPPの普及が進む日本においても、「どれだけ設備を保有しているか」ではなく、「必要な時にどれだけ確実に応答できるか」を評価する制度設計が重要になりそうです。
出典:UK Government Capacity Market Consumer-led Flexibility
