フランス北部ノルマンディー沖で建設が進む大型洋上風力「Dieppe–Le Tréport Offshore Wind Farm」が、2026年末の全面運転開始に向けた最終の風車据え付け段階に入っています。プロジェクトを運営する「Éoliennes en Mer Dieppe Le Tréport (EMDT)」の発表によると、2026年5月現在、Dieppe港を拠点とした工事は極めて順調に推移しており、地域雇用の拠点となるメンテナンスセンターも本格稼働を開始しています。
同案件は、ノルマンディー沿岸から約15〜17km沖合に位置し、事業面積は約83平方キロメートルに及びます。Siemens Gamesa製の出力8MW級大型風車62基を設置し、総設備容量は約496MWに達します。年間発電量は約20億kWhを見込んでおり、これはフランスの約85万人分の年間電力消費量に相当する規模です。事業主体はOcean Windsを筆頭に、日本から住友商事、フランス政府系のBanque des Territoiresが参画する国際コンソーシアムが担っています。
フランス第2回洋上風力入札で選定
Dieppe–Le Tréportは、フランス政府が2014年に実施した第2回洋上風力入札で選定された歴史的な案件です。フランスの洋上風力開発は国家主導型で進められており、政府が詳細な環境調査を終えた海域を事業者に割り当てる仕組みをとっています。
本案件は当初、固定価格買取制度(FIT)に基づき非常に高い支援単価が設定されていましたが、世界的なコスト低下圧力を受け、2018年にフランス政府との間で売電価格の再交渉が行われました。その結果、価格は約133ユーロ/MWh前後まで引き下げられ、当時の欧州市場における「公的支援とコスト競争力」のバランスを巡る議論の先駆けとなりました。
欧州の逆風を乗り越え、建設は最終局面へ
現在、欧州の洋上風力業界は、原材料価格の高騰や金利上昇、サプライチェーンの混乱といった「逆風」にさらされています。多くのプロジェクトが採算悪化により停滞を余儀なくされる中で、本プロジェクトは強固なファイナンス体制と確実な施工管理により、計画通りの進捗を維持している数少ない成功例として注目されています。
2026年春までに、全62基のジャケット式基礎構造物の設置がほぼ完了し、現在はサン・ナゼールで製造された風車本体の沖合輸送と設置作業が進行中です。Dieppe港に開設された運転・保守(O&M)拠点では、すでに約80人の専門スタッフが配備され、長期的な運営体制が整えられています。
フランス政府は、国家戦略「France 2030」において2050年までに洋上風力40GWの導入を掲げています。本案件の全面運開は、着床式から浮体式へと拡大を続けるフランス洋上風力市場において、エネルギー安全保障と脱炭素化を両立させる重要なマイルストーンとなるとしています。