スイス建材大手Holcimは、2026年5月、スウェーデンの炭素鉱物化スタートアップPaebbl、およびドイツ建設会社Goldbeckとの提携を発表しました。3社は、CO2を固定化するセメント代替材料を活用した建設プロジェクトを開始し、ドイツ南部の物流施設基礎工事へ商業適用を進めます。

今回採用される「Paebbl Rebond」は、回収したCO2を鉱物化(Mineralization)し、炭酸マグネシウム系材料へ転換したSCM(Supplementary Cementitious Material:補助セメント材料)です。従来のセメント使用量を削減しながら、材料内部へCO2を恒久固定する特徴を持ちます。
セメント産業の脱炭素化と炭素除去を両立
セメント産業は、石灰石焼成工程に伴うプロセス排出が大きく、世界のCO2排出量の約7〜8%を占めるとされています。電力由来排出だけでなく、化学反応そのものからCO2が発生するため、脱炭素化が難しい産業分野の一つです。
今回の技術は、単なる低炭素化ではなく、建材そのものへCO2を固定化する「Carbon-Storing Materials」として位置付けられています。Paebblは、回収CO2と鉱物資源を反応させることで、建設材料として利用可能な粉体へ変換する技術を開発しています。
Holcimは、こうした低炭素材料を既存建設プロジェクトへ統合することで、建設分野全体の排出削減を加速する考えとしています。
欧州CBAMやGXでも重要性高まる可能性
近年、欧州ではCBAM(炭素国境調整メカニズム)の本格導入が進み、セメントや鉄鋼など高排出産業への炭素コスト反映が強まっています。特にセメント産業では、Scope1排出削減と並び、低炭素材料やCCUS(CO2回収・利用・貯留)の導入が競争力に直結し始めています。
また、日本でもGX(グリーントランスフォーメーション)政策の中で、産業部門の排出削減やカーボンリサイクル技術の重要性が高まっています。今後は、製造時のCO2排出量だけでなく、「どの電力を、いつ使って生産したか」という時間価値・地域価値を含めた環境価値管理への関心も拡大する可能性があります。
特に欧州では、24/7カーボンフリー電力やアワリーマッチングへの議論も広がっており、将来的には建材製造工程における電力由来排出管理まで含めた、より粒度の細かい脱炭素評価へ発展する可能性もあります。
出典:Holcim partners with Paebbl and Goldbeck on first industry application of carbon-storing technology