ISSB、自然関連開示基準の方向性で合意 TNFD活用やシナリオ分析開示を整理
IFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2026年5月13日、自然関連開示基準の開発に向けた方向性について合意したことを発表しました。
ISSBは現在、企業の自然資本・生物多様性関連リスクの情報開示に関する検討を進めており、今回の議論では、自然関連シナリオ分析や地域依存性の開示、既存フレームワークとの整合性などについて一定の整理を行いました。
検討対象となっているのは、森林、水資源、土壌、生態系サービスなど自然資本への依存や影響が企業価値に与えるリスク・機会です。気候変動開示基準「IFRS S2」に続き、自然関連分野でも国際的な比較可能性を持つ情報開示基盤を整備する動きが強まっています。
TNFDベース活用へ 位置情報やシナリオ分析も議論
ISSBは、自然関連開示について、新たな強制的サステナビリティ基準としてではなく、「IFRS Practice Statement(実務ガイダンス)」として開発を進める方向で整理しています。
内容面では、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)のフレームワークをベースにする考えを示しました。TNFDは、企業活動と自然資本の関係性を「Locate・Evaluate・Assess・Prepare(LEAP)」の4段階で分析する手法を採用しており、事業拠点単位の地域情報やバリューチェーン上の依存性分析を重視しています。
今回の協議では、自然関連リスクに対するシナリオ分析開示についても議論されました。ISSBは、自然関連シナリオ分析について、気候分野ほど定量モデルが成熟していない現状を踏まえ、定性的情報も含めた柔軟な開示を認める方向で整理したとしています。
また、先住民コミュニティや地域社会との関係性、自然関連リスクにさらされる資産比率、移行計画との関係なども論点として扱われました。
サプライチェーン・金融市場への影響拡大
自然関連開示は、単なるCSR情報ではなく、資本市場向けリスク情報として位置づけられつつあります。特に食品、農業、鉱業、エネルギー、化学、データセンターなど、水資源や土地利用への依存度が高い産業では、調達リスクや規制リスクへの影響が大きいとみられています。
欧州ではCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やESRSにおいて生物多様性開示が既に制度化されており、ISSB側も国際投資家向け基準との相互運用性を意識した設計を進めています。
今後、自然関連データがScope 3排出量やサプライチェーン分析と結び付くことで、企業の調達戦略や立地戦略、再エネ開発、森林保全投資などにも影響が及ぶ可能性があります。特にAI・データセンター分野では、電力だけでなく水使用量や地域環境負荷への説明責任が強まる方向にあるとみられます。
出典:IFRS Foundation ISSB Nature-related disclosures
一方、IFRS財団傘下のInternational Sustainability Standards Board(ISSB)は、現時点ではアワリーマッチングについて明確な制度導入方針を示していません。
ISSBのIFRS S2では、Scope2についてlocation-based排出量やcontractual instruments(契約手段)に関する情報開示を求めていますが、時間一致までは要求していません。
出典:IFRS S2 Climate-related Disclosures
ただし、ISSBはGHG Protocolへの依存度が高く、今後GHG Protocol側で時間粒度やdeliverabilityなどの概念が正式化された場合、ISSB開示へ波及する可能性はあります。
特にISSBは、「faithful representation(実態忠実性)」や投資家向け透明性を重視しています。このため、「年間RECだけで本当に低炭素と言えるのか」という議論が強まれば、将来的にScope2開示の高度化へつながる可能性もあります。
もっとも、現時点では制度化はまだ初期段階であり、スマートメーター整備、証書制度、国際整合性、データコストなど課題も多く残されています。ただ、GHG Protocol、SBTi、ISSBの議論を総合すると、Scope2が単なる「年間MWh一致」から、「いつ・どこで・本当に低炭素だったのか」を重視する方向へ進む可能性は徐々に高まりつつあると言えそうです。
出典:Science Based Targets initiative
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