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51013001 【ESRS】ESRSが求める「サステナビリティ開示」とは。アワリーマッチングの影響は

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欧州連合(EU)では、企業のサステナビリティ情報開示を大幅に強化する制度として、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)と、それに基づく開示基準ESRS(European Sustainability Reporting Standards)の適用が進んでいます。

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CSRDは、従来のCSR報告のような任意開示ではなく、サステナビリティ情報を財務情報に近いレベルで標準化・監査対象化する制度です。対象企業には、気候変動、人権、生物多様性、サプライチェーンなど幅広い項目について定量・定性情報の開示が求められます。

出典:European Commission - Corporate sustainability reporting

ESRSは、そのCSRDに対応する具体的な開示基準です。気候変動を扱う「ESRS E1」では、温室効果ガス(GHG)排出量やエネルギー消費量、再生可能エネルギー比率、移行計画などの開示が求められています。

「ダブルマテリアリティ」が特徴

ESRSの大きな特徴として、「ダブルマテリアリティ」の考え方があります。

これは単に「気候変動が企業へ与える財務影響」だけではなく、「企業活動が環境・社会へ与える影響」も重要視するものです。

例えば、森林破壊、生物多様性、水資源、人権問題などについても、企業側のインパクト開示が求められる方向へ進んでいます。

この点は、主に投資家向け情報を重視するISSB(International Sustainability Standards Board)のIFRS S1・S2とは、やや思想が異なる部分でもあります。

一方で、ESRSの温室効果ガス算定自体は、現在のところGHG Protocolに強く依存しています。

特にScope2(購入電力由来排出)については、location-based(平均排出係数方式)やmarket-based(証書・契約反映方式)など、既存のGHG Protocolの枠組みがベースとなっています。

出典:EFRAG - ESRS Set 1

Scope2で「アワリーマッチング」はまだ制度化されていない

現時点では、CSRDやESRSが「アワリーマッチング(Hourly Matching)」について明確に発信していることはありません。

しかし一方で、GHGプロトコル改定とは別の話として、欧州では近年、「年間ベースの再エネ証書だけでは、実際の電力使用実態を十分に表現できないのではないか」という議論が急速に強まっています。

例えば、夜間に火力中心の系統電力を使用しながら、昼間の太陽光由来GO(Guarantees of Origin)を購入することで、「100% renewable」と主張するケースに対しては、グリーンウォッシュ懸念を指摘する声も増えています。

このため、欧州でも、GHGプロトコルと平仄を合わせるように、Temporal Matching(時間相関)、Geographical Correlation(地理相関)、Deliverability(供給可能性)、Granular Certificates(時間粒度付き証書)などの話題が一定程度議論されていることは事実です。

特にEUの再エネ水素制度(RFNBO)では、すでに再エネ電力と水素製造の「時間相関」が制度に組み込まれており、実質的にアワリーマッチングに近い考え方が導入されています。

GHG Protocol改定が今後の焦点に

今後、現在、GHG Protocolでは、アワリーマッチングの導入の可能性について議論がなされています。

ESRS自体がGHG Protocol準拠で構築されている以上、将来的にGHG Protocol側で時間粒度の考え方が強化されれば、欧州のサステナビリティ開示にも影響が及ぶ可能性は否定できないと思われます。

特にAIデータセンターや半導体工場のように24時間大量の電力を消費する産業では、「年間ベース」だけではなく、「実際にその時間に低炭素電力が存在したのか」が重要視される方向へ進む可能性があります。

もっとも、現時点では制度化の具体像は見えておらず、データ整備やスマートメーター、証書制度、国際整合性など多くの課題も残されています。

ただ、欧州のサステナビリティ開示が「量」だけでなく、「時間」「場所」「実態」へ徐々に踏み込み始めていることは、今後の電力・環境価値市場を考える上で重要な変化と言えそうです。

出典:European Commission - European Sustainability Reporting Standards

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