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11123101「富士フイルム、北米全拠点の電力を再エネ化、バーチャルPPAで」フィジカルPPAとの違いを解説

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富士フイルムホールディングスは、2024年1月25日、米国とカナダを合わせた北米エリアの全拠点において、バーチャルPPA(電力購入契約)を導入し、全使用電力を実質的に再生可能エネルギーへと転換したことを発表しました。この施策は、同社が掲げる「2040年度までに自社使用エネルギーに起因するCO2排出をゼロにする」という脱炭素目標に向けた取り組みの一環です。

今回の再エネ転換の中核となるのは、米国のエネルギー企業であるGeronimo Power社がテキサス州ブレビンスに建設した太陽光発電設備です。同設備が本格稼働を開始したことに伴い、富士フイルムの北米統括会社であるFUJIFILM Holdings America Corporationは、2023年に締結した契約に基づき、年間約30万MWhに相当する再生可能エネルギー電力証書(REC)の購入を開始しました。

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北米全域での実質再エネ化とCO2削減効果

北米における今回の調達規模は、富士フイルムグループ全体が2024年度に排出するCO2の約10%に相当し、年間で約9万トンの削減効果を見込んでいます。同社は、環境負荷低減に向けて「追加性」のある再エネ電力を重視しており、今回のバーチャルPPAによる大規模調達は、将来にわたる安定的なクリーンエネルギー確保の重要な手段として位置づけられています。

同グループでは、自社施設への太陽光パネル設置などの自家発電に加え、外部の発電事業者から直接調達するコーポレートPPAを積極的に活用しています。テキサス州の広大な土地を利用した太陽光発電所からの環境価値を全拠点に紐付けることで、広域に分散する事業所の脱炭素化を一括して推進するとしています。

企業の脱炭素化を支えるバーチャルPPAの仕組み

バーチャルPPA(Virtual Power Purchase Agreement)とは、需要家が発電事業者から「電力そのもの」を物理的に受け取るのではなく、電力の取引から派生する「環境価値(証書)」のみを仮想的に取引する契約形態です。電力は卸売市場に直接売却され、需要家は市場価格と固定価格の差額を精算するとともに、発電に伴う環境価値を取得します。

この手法の最大の特徴は、自社拠点から遠く離れた場所にある大規模な再エネ発電所を活用できる点にあります。物理的な送電網の制約を受けないため、富士フイルムのように北米全域に拠点を持つ企業であっても、一箇所の巨大な太陽光発電所から得られる証書によって、全拠点の電力を実質的に再エネ化することが可能となります。

フィジカルPPAとの構造的違いと選択の基準

一方で、フィジカルPPA(Physical Power Purchase Agreement)は、発電した電力と環境価値をセットで需要家が直接買い取る仕組みです。物理的な電力供給を伴うため、原則として発電設備と需要拠点が同じ送電網内に存在する必要があります。日本国内などで見られる「オフサイトPPA」の多くはこの形態ですが、送電コスト(託送料)が発生するほか、拠点が広範囲に及ぶ場合には契約が複雑化する傾向があります。

企業の選択基準としては、拠点の集約度や所在地の電力自由化の状況が大きく影響します。バーチャルPPAは、電力供給の物理的ルートを確保する必要がないため、広域に展開するグローバル企業にとって極めて柔軟性の高い手法です。富士フイルムは、このバーチャルPPAを活用することで、北米という広大な市場において迅速かつ大規模な脱炭素化を実現したと言えます。

出典:https://holdings.fujifilm.com/ja/news/list/2112

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