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電力消費の昼シフトで排出量を下げる!需要家排出係数とアワリーマッチングの関係を読み解く

はじめに:Scope2排出量は「時間粒度」で把握する時代へ

企業の脱炭素経営において、電力由来のCO2排出量(Scope2)の算定は中核的なテーマです。これまでの実務では、年間平均の排出係数を用いた比較的粗い粒度での把握が一般的でした。しかし現在、この算定の粒度そのものを見直す議論が進んでいます。

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すなわち、従来の「年間平均」ではなく、「時間ごと」に排出係数を捉え、電力消費と掛け合わせて算定するという考え方です。これは、電力システムにおける再生可能エネルギーの導入拡大により、時間帯ごとに電源構成が大きく変動する現実をより正確に反映するためのものです。

この変化は、単なる精度向上ではなく、需要家の電力使用行動そのものを評価対象とする重要な転換点となります。

目次

Scope2算定の基本:マーケットとロケーションの両輪

Scope2排出量は、

・マーケットベース手法

・ロケーションベース手法

の両方で算定されます。

マーケットベース手法は、再エネ電力契約や非化石証書など、需要家の選択した電力の属性に基づく算定です。一方、ロケーションベース手法は、実際に接続されている電力系統の発電構成に基づく算定です。

この2つは代替関係ではなく補完関係にあり、前者は「調達」、後者は「実態」を表します。両者を併せて評価することで、企業の電力利用の全体像が明らかになります。

グリッド排出係数とは何か:ロケーション基準の前提

ロケーションベース手法を理解する上で重要なのが、「グリッド排出係数」です。

グリッド排出係数とは、ある送配電網(グリッド)に接続されているすべての発電所のCO2排出係数を、その発電量で加重平均した値です。

例えば、火力、原子力、水力、太陽光、風力など複数の電源が存在する場合、それぞれの発電量と排出係数を掛け合わせて合計し、全発電量で割ることで算出されます。

ロケーションベース手法では、このグリッド排出係数を用いて、需要家の電力消費に伴う排出量を算定します。

現行制度の実態:年間平均グリッド係数による算定

現行のロケーションベース手法では、時間帯別排出係数は用いられていません。

年間を通じたグリッド排出係数を用いて、

年間CO2排出量 = 年間電力消費量 × 年間平均グリッド排出係数

として算定されます。

しかしこの方法では、時間帯による電源構成の違いが反映されません。昼と夜の差が平均化されるため、需要家の行動が排出量に反映されないという課題があります。

新しい方向性:時間帯別排出係数

今後は、時間帯ごとの排出係数を用いて、

各時間の排出量 = 消費量 × その時間の排出係数

として算定し、それを積み上げる方式へと移行していきます。

これにより、電力消費のタイミングが直接的に排出量に影響する構造になります。

昼シフトの効果:運用で削減するという発想

太陽光発電が多い昼間は排出係数が低く、夜間は火力依存が高まり排出係数が高くなる傾向があります。

このため、夜間の電力消費を昼間に移す「昼シフト」によって、電力量を変えずにCO2排出量を削減することが可能になります。

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これは設備投資ではなく運用改善で実現できることを意味します。需要家自身が努力をすることでCO2排出量を下げられることが可視化され、行動変容が促されます。

【例】

昼シフトの効果を簡単な数値例で考えてみます。

仮に、夜間の排出係数が0.6kg-CO2/kWh、昼間が0.3kg-CO2/kWhだとします。

ある需要家が1000kWhを夜間に消費した場合、排出量は600kgとなります。

しかし、このうち500kWhを昼間にシフトすると、

夜間:500kWh × 0.6 = 300kg

・昼間:500kWh × 0.3 = 150kg

合計450kgとなり、150kgの削減が可能になります。

電力量は同じでも、時間帯を変えるだけで排出量が25%削減されることになります。

このように、時間帯別排出係数のもとでは、需要側の運用改善が直接的な削減効果を持つようになります。

需要家排出係数:行動を評価する新しい指標

こうした行動変容の成果を定量的に評価するための指標が「需要家排出係数」です。

需要家排出係数は、一定期間のCO2排出量を電力消費量で割った値であり、その需要家の平均的な排出係数(炭素強度)を示します。

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この指標の良いところは、相対比較が可能になる点にあります。

総排出量や電力消費量は企業規模や生産量に依存するため、そのままでは比較できません。しかし需要家排出係数であれば、単位電力量あたりの排出量として比較が可能になります。

この考え方は、自動車のエコドライブにおける燃費と同じです。ガソリン消費量や走行距離では比較できませんが、燃費であれば比較可能です。

同様に、企業間の比較や、自社の過去との比較において、需要家排出係数は有効なKPIとなります。

さらに、

CO2排出量 = 電力消費量 × 需要家排出係数

という関係により、排出削減の要因分析も可能になります。

アワリーマッチングとの関係

アワリーマッチングは、再エネ発電と電力消費を時間単位で一致させる概念です。

一方、需要家排出係数は実際の消費行動に基づく指標です。

アワリーマッチングは契約で達成できる側面がありますが、需要家排出係数は行動変容なしには改善しません。

このため、両者を併用することで、より実態に即した評価が可能になります。

おわりに:脱炭素は時間設計へ

時間帯別排出係数の導入により、脱炭素は「量」から「時間」へと拡張されます。

今後は、電力の使い方そのものを設計することが重要となり、需要家排出係数はその中心的な指標となります。

昼シフトはその第一歩であり、行動と調達を組み合わせた新しい脱炭素戦略が求められています。

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