長期脱炭素電源オークションは、2050年のカーボンニュートラル実現と将来の電力安定供給の両立を目指し、脱炭素電源への新規投資に対し原則20年間にわたり固定費水準の容量収入を保証する制度です。
この中でLNG専焼火力は、短期的な需給逼迫防止と将来の脱炭素化に向けたトランジション電源として特例的に募集の対象とされてきました。
制度開始当初の第1回入札では、2023年度から2025年度までの3年間で600万キロワットの募集量が設定され、575.6万キロワットが落札されました。
しかし、電力需要が増加傾向となる見通しが示されたことなどを踏まえ、第2回入札では追加で募集が行われ、224万キロワットの募集量に対して131.5万キロワットが落札されるにとどまり、投資回収の予見性向上や事業環境の整備が引き続き課題となっていました。
委員会における議論と第三回に向けた制度変更
関連委員会では、インフレ等による事業環境の激変に対応し、安定供給に必要なLNG専焼火力の投資を後押しするための制度変更が議論されました。
第3回入札に向けては、すべての電源に適用される応札価格の閾値が1キロワットあたり年間10万円から20万円へと大幅に引き上げられました。
一方で、各電源種が実際にオークションで応札できる「個別の上限価格」は、この20万円という閾値の範囲内で、発電コスト検証ワーキンググループのデータ(建設費や運転維持費など)に基づいて電源ごとに算定されます。
LNG専焼火力については、発電コストが他の新設脱炭素電源に比べて相対的に低いため、算定される個別の上限価格は20万円を大きく下回ります。参考として、第2回入札におけるLNG専焼火力の上限価格は1キロワットあたり年間38,014円でした。
第3回入札においては、物価上昇などを反映してこの個別の上限価格も引き上げられましたが、それでも1キロワットあたり年間5.7万円前後の水準であったと推計されます。
また、将来的な脱炭素化を確実に進めるため、応札事業者にはアンモニア混焼などによる2050年までの完全な脱炭素化に向けたロードマップの提出と、その公表が厳格に義務付けられることとなりました。
第三回オークションにおけるLNG専焼火力の落札結果と金額の妥当性
これらの制度変更を経て実施された第3回オークションにおいて、LNG専焼火力は非常に強い競争環境に置かれました。募集量293万キロワットに対して475万キロワットの応札があり、最終的に303.8万キロワットが落札されました。
落札金額の妥当性については、インフレ等に対応するため上限価格の閾値が引き上げられていたものの、マルチプライス方式の下で事業者による厳しい価格競争が行われました。
その結果、LNG専焼火力の加重平均約定価格は1キロワットあたり年間4.6万円となり、上限価格の約8割の水準に落ち着きました。
将来の他市場収益の還付の仕組みを考慮すれば実質的な国民負担はさらに抑制される試算となっており、競争原理が十分に機能した極めて妥当性の高い落札金額であったと評価されています。
容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果別紙のLNG専焼火力落札電源一覧
- 北陸電力株式会社、落札案件名富山新港火力発電所LNG2号機、電源種LNG専焼火力、落札容量583,750キロワット
- 九州電力株式会社、落札案件名(仮称)新小倉発電所6号機、電源種LNG専焼火力、落札容量900,000キロワット
- 株式会社JERA、落札案件名袖ケ浦火力発電所新1号、電源種LNG専焼火力、落札容量777,058キロワット
- 株式会社JERA、落札案件名袖ケ浦火力発電所新2号、電源種LNG専焼火力、落札容量777,058キロワット

今回の約定結果が第四回以降のオークションへ与える影響と展望
第3回入札における旺盛な応札状況と、データセンターや半導体工場の新増設に伴う将来の電力需要の増加見通しは、来年1月に予定される第4回入札以降の制度設計に抜本的な影響を与えます。量的な側面では、電力の安定供給に万全を期す観点から、LNG専焼火力の募集を第4回以降も当面の間は継続する方向で検討が進められています。
条件面では、提出する脱炭素化ロードマップにおいて、2050年の完全脱炭素化を低炭素水素や低炭素アンモニアなどのクリーンな燃料によって達成することが厳格に求められるようになります。
価格面においては、入札時の応札価格のみによる比較から、制度適用期間にわたり調達国の消費者物価指数によるインフレ率の継続を仮定して算出した補正値を用いた価格競争へと移行し、国民負担の抑制が図られます。さらに、資本コストの増大を防ぐため、制度適用期間の上限が原則40年に設定される見通しであり、事業者は長期的な脱炭素化への道筋とマクロ経済変動への耐性を備えた強靭な事業組成が求められることになります。