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11021009 ドイツで蓄電池ブーム。変調の兆しも

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ドイツでは今、かつてない規模で「蓄電池ブーム」が起きています。エネルギー自立に向けて大躍進する一方で、国の政策や現場の課題が発生しています。

■ 爆発的に普及する蓄電池 2025年末時点で、ドイツの大規模(グリッドスケール)蓄電池の稼働容量は2.5GWを超え、EU全体の約25%を占めるトップクラスに躍り出ました。

わずか2年前の1.2GWから倍増という驚異的なスピードです。さらに今後の新規建設計画(パイプライン)は10GW(10.5GW/26.3GWh)を超えています。

家庭用蓄電池も欧州最大の市場となっており、すでに200万世帯以上(持ち家層の6人に1人)が導入済みです。付加価値税(VAT)免除などの強力な後押しもあり、購入意欲は高く、2030年には700万世帯に達するとの予測もあります。

■ 「捨てる電力」を救えば8億ユーロの節約に ここまで導入が進んだ最大の理由は「圧倒的なコスト削減効果」です。

ドイツでは現在、風力や太陽光で発電した電力の「出力抑制(余剰分を捨てること)」が大きな課題で、2025年には総発電量の約3.4%にあたる8TWhが無駄になりました。

もし10.5GWの蓄電池パイプラインが稼働していれば、この無駄の約3分の1を防ぎ、再給電コスト(6億1300万ユーロ)と天然ガス購入費(2億1900万ユーロ)の合計約8億ユーロを節約できたと試算されています。蓄電池の年間追加投資額は推定1億4500万ユーロであり、投資を遥かに上回るリターンが得られる計算です。

■ 「ガス火力優遇」への転換の兆し しかし、現在議論中の「電力供給安全保障・容量法(StromVKG)」では、2026年9月からバックアップ電源確保のための入札が始まりますが、ここで「化石ガス火力」が優遇される懸念が浮上しています。

安価な蓄電池よりガス火力が優先されれば、ドイツは今後数十年も高価なガス輸入に依存し続けるリスク(ロックイン)を抱えることになります。

また、地方自治体でも苦戦が続いています。蓄電池は市長の関心度が最も高い技術である一方、60%の市長が「行政内に蓄電池の知識がない」と回答しています。

さらに72%が「予算が厳しい」、97%が「送電網への接続制限がある」と答えるなど、現場での実装には厚い壁があります。