総務省は、2026年5月22日、電力と通信インフラの連携を促進する「ワット・ビット連携関連実証」に関する実証事業の公募を発表しました。AI利用拡大や通信トラヒック増加に伴うデータセンター需要の急拡大を背景に、電力・通信・データセンター事業者が連携した新たなインフラ運用モデルの確立を目指します。
今回の公募では、オール光ネットワーク(APN)や先進的ネットワーク技術を活用した「分散データセンター運用」や「高度なワークロードシフト」に関する実証提案を募集します。大量電力を消費するAI向けデータセンターの整備が全国的課題となる中、再エネ立地や系統制約を踏まえながら計算処理を柔軟に移動させる仕組みの検証が想定されます。
GX2040ビジョンを背景に制度化
政府は2025年2月に閣議決定した「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」において、データセンター整備と電力インフラ整備を一体的に進める方針を示していました。今回の実証事業は、その政策具体化の一環と位置付けられます。
近年は、AI向けGPUサーバー増設によるデータセンター電力需要の急増が国内外で問題化しており、再エネ余剰地域への計算処理移転や、電力需給に応じたワークロード制御への関心が高まっています。ワット・ビット連携は、電力制約を前提にデジタルインフラを最適化する新たな政策領域として注目されそうです。
6月12日まで提案募集
公募期間は2026年5月22日15時から6月12日16時30分まで。管理事業者は株式会社三菱総合研究所が務めます。
公募の詳細内容
1. 本実証事業の目的と背景
近年、AIの利用拡大によりデータセンター(DC)の需要が急増しています。しかし、従来DCが集積してきた東京・大阪エリアでは、電力系統容量や立地条件の制約が顕在化しており、新設や増設が困難な状況に陥っています。このままでは、国内のAI計算需要が海外へ流出するリスクや、大規模災害時における基幹サービスの継続性低下が懸念されます。

こうした課題を解決するため、DCの立地を地方へ分散させつつ、従来と同等の利便性で利用できる新しい運用モデルが求められています。具体的には、オール光ネットワーク(APN)等を活用した「分散データセンター運用」と、電力需給バランスや再エネ発電量、災害リスク等に応じて計算タスク(ワークロード)の実行場所や時間を柔軟に最適化する「ワークロードシフト(WLS)」が注目されています。本実証事業の目的は、実環境での検証を通じて、これらの技術的・運用的・事業的な不確実性を低減し、社会実装と普及促進につなげることにあります。
2. 対象となる実証事業 公募の対象となるのは、以下の2つの実証事業です。
・実証(1) APN等を活用した分散データセンター運用のユースケース拡充に係る社会実証 採択予定件数は5件程度で、業務委託費の上限額は合計18.5億円です。
・実証(2) 高度なワークロードシフトの実現に向けた社会実証 採択予定件数は3件程度で、上限額は合計10.8億円です。
履行期間は、契約締結(令和8年7月中旬以降を想定)から令和9年2月1日までとなります。
3. 応募要件 【応募要件】 民間企業、大学、地方公共団体など法人格を有する機関が対象です。国内の拠点で実証を行う必要があり、単独での応募も可能ですが、複数の法人による「実証コンソーシアム」を組成して応募することもできます。特に実証(2)については、複雑な連携が必要となるため、通信・電力・データセンターの3分野をまたぐコンソーシアム構成であることが必須要件とされています。
【電力・再エネに関する詳細】 本実証では、エネルギーの観点、とりわけ電力と再エネの有効活用が極めて重要なテーマとなっています。 実証(1)では、DCの立地モデルとして「再エネ豊富な地方都市」が想定されています。これは、近傍に大規模な再エネポテンシャルを有するものの、都市部への送電系統整備が十分でない地域にDCを置き、分散拠点として活用するモデルです。
実証(2)のワークロードシフト(WLS)では、電力需給や再エネ発電量、系統混雑状況をリアルタイムで把握し、いつ・どの拠点で計算処理を行うかを動的に判断・制御する仕組みの構築が求められます。例えば、ある地域で太陽光発電等による再エネが余剰となっている場合、その地域のDCへ計算タスクを移動させることで、再エネの有効活用と電力系統の混雑回避を両立させることが期待されています。
そのため、検証項目には「電力事業者との情報連携・運用条件の整理」が含まれており、再エネ発電状況のデータ共有のあり方や、社会的意義(再エネ活用やレジリエンス向上への寄与)の評価が必須となっています。
4. セレクション(選定)の詳細 採択機関の選定は、外部専門家等で組織される評価会および事前の書面審査によって行われます。主な評価基準は以下の3点です。
・必要性:対象とする社会課題が明確であり、電力事業者や通信事業者、クラウド事業者など、各プレーヤーの視点から実証の期待される効果が具体的に示されているか。
・妥当性:既存の技術や取り組みと比較して先進性・新規性があるか、社会実装に向けた現実的なビジネスモデルが描けているか。また、模擬環境のみの検証は認められず、「実フィールドでの実証」であることが必須条件とされています。
・履行確実性:サイバーセキュリティやサプライチェーンリスクへの対策など安全面が十分に考慮されているか。また、適切なスケジュール管理と実施体制(実証(2)における3分野横断体制など)が確保されているかが厳しく問われます。
これらの項目について総合評価点(加算方式)を算出し、上位の提案から予算の範囲内で委託予定先が選定されます。なお、より効率的に実証を実施するため、共通の設備等を利用できる場合などには、総務省等の判断により複数の事業提案を統合する調整が行われる場合もあります。
補助金額の詳細
1. 補助額(業務委託費の上限) 本事業は調査研究の「業務委託」に基づく対価的性格を持つ経費として支払われます。 業務委託費の合計上限額は、実証(1)が5件程度で合計18.5億円、実証(2)が3件程度で合計10.8億円と設定されています。実際の委託額は、有識者による評価や支出計画書の妥当性を踏まえて協議のうえで決定され、上限額の範囲内で調整が行われます。
2. 経費の使途(対象経費) 経費として計上できるのは、本実証事業に「直接必要」な経費に限られます。主な対象項目は以下の通りです。
・物品費:実証に必要な設備備品費、借料(リース・レンタル)、消耗品費。ただし、パソコンや文房具などの汎用品は対象外であり、設備は原則リース等での調達が求められます。
- 購入する場合の条件: 機器を購入する場合、耐用年数1年以上かつ取得価格10万円以上のものが対象となりますが、「リース等で調達できない理由」および「実証終了後の継続利用の計画」を記した理由書の提出が必須です。これを事務局(三菱総合研究所)が特別に必要と認めた場合に限り、対象経費となります。
- 汎用品は不可: パソコンやデジタルカメラなど、本業務以外にも汎用的に利用できる設備備品は対象外です。
<工事費について>
- 事前協議が必須: 本実証に直接必要なシステムの設置に係る工事費は対象項目に含まれています。ただし、事前に事務局と協議を行い、その必要性と妥当性が認められた経費のみが対象となります。
・人件費:事業に直接従事する者の本給や賞与等。
・その他:有識者等への謝金、片道100km以上の出張等に係る旅費・交通費、システムの工事費・保守費、印刷製本費、通信運搬費、プラント運転等に直接要する光熱水料など。
・一般管理費等:直接経費の10%、または実証機関の財務諸表から算定した割合のうち低い方が適用されます。
・再委託・外注費:実証の「本質的な部分」の再委託は不可ですが、仕様を指定したプログラム作成等の外注は事前協議の上で対象となります。 なお、オフィスの賃借料等の維持管理費、一般事務用品、振込手数料、事故対応に要する費用などは対象外です。
3. 見積もり算定方式(利益等排除ルール) 見積もり算定において特に厳格なのが、自社製品の調達や、100%子会社、実証コンソーシアムの他の構成機関から調達を行う場合のルールです。 業務委託費の性質上、実証機関自身の利益分が含まれることは不適切とされるため、
こうした「自社調達」を行う場合は、製造原価又は仕入原価をもって計上し、自社の利益を排除しなければなりません。原価計算資料等の証拠書類の提出が求められ、カタログ商品等で原価が示せない正当な理由がある場合は、直近の決算報告における経常利益率等を用いて利益相当額を差し引く措置が必要となります。
出典:総務省 報道資料