WWFジャパンは2026年2月5日、政府が2026年度より本格導入を予定している排出量取引制度「GX-ETS」の実施指針案に対し、制度の実効性を高めるための改善を求める意見を発表しました。日本における気候変動対策の大きな進展として制度導入を評価しつつも、1.5度目標の達成には現行案の課題修正が不可欠であると主張しています。
排出枠の総割当量に対するモニタリングとキャップの導入
WWFは、企業の届出をベースとした現状の「ボトムアップ方式」では、社会全体に割り当てられる排出枠が過剰になるリスクを指摘しています。特に、企業の負担軽減を目的とした多重の補正・調整措置が、結果として排出枠の膨張を招き、削減意欲を削ぐ懸念があるとしています。
これを防ぐため、総割当量が日本の排出削減目標(NDC)やパリ協定の1.5度目標と整合しているかを厳格にモニタリングし、その結果を公表する仕組みを指針に盛り込むよう求めています。さらに、制度開始後の早い段階で、排出枠の総量に上限を設ける「キャップ」の導入が必要であると提言しています。
炭素価格の上限引き上げによる投資予見性の確保
GX-ETSでは市場価格の急騰を防ぐために上限・下限価格が設定されますが、政府案の2026年度上限価格(1トンあたり4,300円)は国際水準と比較して著しく低いと分析しています。IEA(国際エネルギー機関)が2030年の先進国に必要と想定する140ドル(約21,700円)や、EUの取引価格(約10,000円前後)との乖離が指摘されています。
WWFは、炭素価格が低すぎると企業の脱炭素投資へのインセンティブが働かないため、2030年に向けて上限価格を十分に引き上げるべきであるとしています。これは、EUの炭素国境調整措置(CBAM)への対応力を高めるとともに、企業に対して長期的な投資の予見性を与えることにつながると主張しています。
カーボンクレジットの使用制限と質の担保
現行案で認められている「排出量の10%までのカーボンクレジットによる代替」についても、WWFは段階的な制限強化を求めています。EUの排出量取引制度では既にクレジット利用が認められていない潮流を踏まえ、日本においても利用可能枠を順次縮小させる道筋を明示すべきとしています。
あわせて、使用を認めるクレジットの要件として、削減量の算定根拠や永続性、生物多様性への配慮など、質の高い基準を設けることを要望しています。WWFは、安易なオフセット(相殺)に頼るのではなく、自社バリューチェーン内での直接削減を優先させる制度設計の重要性を改めて強調しました。