アワリーマッチングが導入された場合、系統用蓄電池の価値を「電力の時間シフト」だけでなく、「環境価値の時間シフト」へと拡張し、新たなビジネスモデルを生み出します。

GHGプロトコル・スコープ2改定が、電力システムにどのような影響を与えるかについては以下の記事をご覧ください。
蓄電池価値の拡張:電力から環境価値へ
従来、系統用蓄電池は、昼間の電力価格が低い時間帯に充電し、夜間など価格が高い時間帯に放電することで、いわゆるアービトラージ収益を得ることが主目的でした。しかし、アワリーマッチングの枠組みのもとでは、電気そのものに加えて、時間情報を持つ環境属性証書、すなわちGCEAC(Granular Certificate / 時間粒度付きEAC)を組み合わせた新たな収益機会が生まれます。以下ご説明します。
目次
- 蓄電池価値の拡張:電力から環境価値へ
- GCEACの時間価値と「タイムマシン効果」
- 排出係数の差分が生む付加価値
- 取引ルールと標準化の重要性
- 応用モデル①:オンサイト蓄電池との統合
- 応用モデル②:オンサイトPPAとアワリーマッチングサービス
- 応用モデル③:複合再エネ+蓄電池モデル
- 応用モデル④:電力と環境価値の分離・再配分モデル
- 今後の展開:商用化に向けた設計の進展
GCEACの時間価値と「タイムマシン効果」
具体的には、昼間は太陽光発電などの再生可能エネルギーが豊富であり、需要を上回る供給が発生するため、当該時間帯のGCEACの価値は相対的に低くなります。一方で、夜間は再エネ供給が減少し、需要に対して不足するため、同じ1kWhに紐づくGCEACであっても、その価値は大きく上昇します。
系統用蓄電池は、この時間的な価値差を活用することが可能です。すなわち、昼間に再エネ電力と紐づいた低価格のGCEACを伴って充電し、それを夜間に放電することで、「時間を越えて」高価値なGCEACとして需要家に提供することができます。これはいわば、環境価値における「タイムマシン効果」とも言えるものです。
排出係数の差分が生む付加価値
さらに、このモデルはロケーションベースの排出係数の観点からも付加価値を生みます。例えば、昼間の系統全体の排出係数が0.3kgCO2/kWhと低い時間帯に充電し、夜間に排出係数が0.5kgCO2/kWhに上昇する時間帯に放電する場合、1kWhあたり0.2kgCO2の排出削減価値が創出されることになります。
この結果、需要家にとっては、同じ「再エネ由来電力」であっても、時間的な調整を経た電力を利用することで、ロケーションベース手法における排出量をより低く算定することが可能となります。
取引ルールと標準化の重要性
このビジネスモデルを成立させるためには、GCEACの記録管理、環境価値の付け替え(充電時から放電時への移転)、証書の再割当および最終需要家への販売といった一連の取引ルールの整備が不可欠です。
こうした仕組みについては、国際的な標準化団体である EnergyTag が中心となり、時間粒度を持つ証書の国際標準化・制度設計が進められています。これにより、透明性と信頼性を担保した市場形成が期待されます。
応用モデル①:オンサイト蓄電池との統合
本モデルは、系統用蓄電池単独にとどまらず、太陽光発電所内に蓄電池を併設するオンサイト型にも拡張可能です。発電と蓄電を一体化することで、より効率的に環境価値の時間シフトを行い、電力とGCEACの両面でバリューアップを図ることができます。

また、需要家の敷地内(工場・商業施設等)に蓄電池を設置するモデルも有効です。需要と蓄電を一体化することで、より精緻なアワリーマッチングを実現し、排出削減価値の最大化が可能となります。
応用モデル②:オンサイトPPAとアワリーマッチングサービス
さらに、需要家オンサイトに太陽光発電と蓄電池を併設し、一体的なPPA(電力購入契約)として提供するモデルも考えられます。この場合、単なる電力供給にとどまらず、アワリーマッチングサービスそのものを提供し、需要家の排出削減価値を直接創出するビジネスへと発展します。
応用モデル③:複合再エネ+蓄電池モデル
加えて、太陽光発電と風力発電を組み合わせたPPAに、系統用蓄電池を組み合わせることで、時間的な発電変動をさらに平準化するモデルも想定されます。これにより、より高いレベルでの時間整合的な脱炭素電力供給が可能となります。
応用モデル④:電力と環境価値の分離・再配分モデル
さらに、電力と環境価値を分離し、それぞれを異なる需要家に販売するモデルも考えられます。例えば、ある需要家が電力のみを利用し、環境価値を必要としない場合には、そのGCEACを切り離して別の需要家に販売することが可能です。
また、需要家が特定の時間帯に電力を消費しなかった場合、その時間に対応する環境価値を他の需要家へ再配分・販売することも想定されます。これにより、環境価値の流動性が高まり、市場全体として最適な配分が実現されるとともに、新たなトレーディングビジネスの創出にもつながります。
今後の展開:商用化に向けた設計の進展
株式会社アワリーマッチング および 株式会社電力シェアリング では、これらのビジネスモデルの商用化に向けた制度設計およびプロジェクト設計を進めている段階にあります。アワリーマッチングを核とした新たな電力・環境価値市場の創出に向け、今後の展開が注目されます。