世界規模でガス火力発電所の「建設ラッシュ」が加速しています。生成AI(人工知能)の普及に伴うデータセンター(DC)の爆発的な電力需要増を背景に、主要ガスタービンメーカーへの受注が殺到。三菱重工業をはじめ、GEベルノバ、シーメンス・エナジーの「世界3強」は、数年先まで予約が埋まる異例の事態に直面しています。
データセンター特需が招く世界的な「ガス回帰」
世界的な電力需要は、生成AIの急進により2050年までに75%増加するとの試算も出ています。特に北米では電力供給の逼迫が深刻化しており、2025年にはガス火力発電の開発容量が前年比で約3倍に急増しました。この建設ラッシュを牽引しているのがAIデータセンターであり、新規プロジェクトの約3分の1がDC専用の電源として計画されています。
再生可能エネルギーへの転換が進む一方で、24時間安定した電力を大量に必要とするデータセンター運営にとって、即応性の高いガスタービンは不可欠な存在となっています。米GEベルノバの2025年通期の受注高は前年比65%増を記録し、受注残はすでに2028年分まで積み上がっています。独シーメンス・エナジーも2025年度の受注残高が過去最高の1,310億ユーロ(約21兆円)に達するなど、業界全体が空前の活況に沸いています。
三菱重工、需要激増を受け生産能力を2年で倍増へ
こうした世界的な「建設ラッシュ」を受け、Bloombergによれば、三菱重工業は、ガスタービンの生産能力を今後2年間で倍増させる方針を明らかにしています。当初は3割増の計画でしたが、供給が需要に追いつかない現状から目標を大幅に引き上げた格好です。同社のエナジー事業における受注残高は5兆円を超え、納期が2030年代まで延びるケースも報告されるなど、異例の「争奪戦」が繰り広げられています。
世界のガスタービン市場は、2024年時点で約2,400億ドル(約35兆円)と評価されていますが、2032年にかけてさらなる成長が見込まれています。先ほどのBloomberg記事の中で三菱重工では、既存の火力発電所の建て替え需要も含め、年間で最低40〜50ギガワット(GW)の世界需要が今後10年間は継続すると分析しています。供給不足が成長のボトルネックとなる懸念がある中、同社は生産工程の効率化により「リードタイムの短縮」を最優先事項として掲げています。
慎重な設備投資と「リーン」な体制の維持
旺盛な需要を背景に増産を急ぐ一方で、各メーカーは大規模な工場新設などの固定資産投資には慎重な姿勢を崩していません。三菱重工の伊藤社長は「ブームが去った後の冷え込み」を過去に何度も経験しており、あえて大型投資を避け、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上で対応する「リーン(筋肉質)」な戦略を強調しています。
これはシーメンスやGEも同様で、利益率の維持と将来のリスク回避を重視しながら、既存設備の稼働率を極限まで高める戦略をとっています。脱炭素化という長期的目標と、目の前の「AI電力危機」という現実的な課題の間で、ガスタービンは今や世界のエネルギーインフラを支える戦略物資としての重要性をかつてないほど高めています。
出典:https://www.google.com/search?q=https://www.mhi.com/jp/finance/library/financial/pdf/2024/all_241105.pdf