EUの中でも突出するスペインの太陽光発電導入
欧州では近年、太陽光発電の導入が急速に進んでいます。その中でも、スペインは、EUの中でも特にメガソーラーの導入が進んでいる国の一つとなっています。
私たちアワリーマッチング推進協議会は、5月7~12日の間スペインを訪問し、その理由を分析しています。
2025年時点で、スペインの太陽光発電設備容量は50GW規模に達し、設備容量ベースではドイツに次ぐEU第2位級となっています。また、太陽光発電はスペイン国内の発電電力量の18〜21%前後を占め、風力と並ぶ主要電源へと成長しています。さらに、風力と太陽光を合わせた比率は40%超に達しており、EU平均を大きく上回っています。 (Balkan Green Energy News)
私たちは仮説を立てています、スペインは世界的に見ても「大規模太陽光発電が成立しやすい地理的特異点」の条件を満たしているのではないか、ということです。
メガソーラーが成立しやすい「3条件」
大規模太陽光発電、いわゆるメガソーラーが急速に導入される地域には、一定の共通条件があります。
第一は、日照条件が優れていることです。
太陽光発電は、年間の日射量によって設備利用率が大きく変化します。乾燥地帯や半乾燥地帯では、雲量が少なく、年間を通じて安定した発電が可能となるため、発電コストが低下しやすくなります。
第二は、他用途との土地利用競合が小さいことです。
メガソーラーは広大な土地を必要とするため、人口密集地、高価値農地、森林地帯などでは導入が難しくなります。一方で、砂漠、半乾燥地帯、放牧地、低密度農地などでは、比較的社会的摩擦が小さい形で大規模導入が可能になります。
第三は、需要地と既存送電網に比較的近いことです。
いくら日照条件が良くても、送電線や需要地から遠ければ、大規模な系統投資が必要となります。そのため、都市圏や工業集積地と比較的近い位置に発電適地が存在することが重要になります。
つまり、大規模太陽光発電は単に「日照が強い場所」に広がるわけではなく、
「高日照」「低土地競合」「需要地・送電網への近接性」
という3条件が重なった場所で急速に拡大しやすい構造を持っています。
世界の中でも限られる「導入特異点」
この3条件を同時に満たす地域は、世界的に見ると決して多くありません。
代表例としては、砂漠地帯と大都市圏が隣接するUAE、巨大需要地であるロサンゼルス圏を抱える米国カリフォルニア州、そして北部乾燥地帯とサンチアゴを抱えるチリなどが挙げられます。アジアで言えば、India西部〜中央部の乾燥地帯です。
具体的には、Delhi、Jaipur、Ahmedabad、Mumbaiを結ぶ地域では、ラジャスタン州やグジャラート州を中心に、乾燥・半乾燥地帯が広がっています。
この地域は、
高い日照条件、
比較的低い土地利用競合、
そして巨大人口圏・工業地帯・既存送電網への近接性
を同時に備えており、世界最大級の太陽光発電導入地域へと急速に変化しています。
スペイン南部は「欧州の中の半乾燥地帯」
実は、スペインもこの条件にかなり近い特徴を持っています。
特に南部のCórdoba、Seville周辺には、半乾燥地帯やオリーブ畑中心の農地、放牧地帯などが広がっています。
これらの地域では、森林密度や人口密度が比較的低く、土地利用競合が欧州の中では相対的に小さい特徴があります。
さらに、スペインでは内陸部から海沿いや都市部への人口流出が続いており、一部地域では人口減少や地域経済縮小も進んでいます。この構造は、日本の地方部とも一部共通しています。
一方で、Madrid、Barcelona、Valencia、Málagaなどの大規模需要地や既存送電網が比較的近距離に存在しています。
つまりスペインは、
欧州有数の日照条件、
半乾燥地帯による低土地競合、
そして需要地・送電網への近接性
という、大規模太陽光発電に適した3条件を同時に満たしている国の一つと言えます。
スペインの太陽光拡大は「偶然」ではない可能性
スペインにおける太陽光発電の急速な拡大は、単なる政策支援や脱炭素目標だけで説明できるものではない可能性があります。
むしろ、
「高日照」
「半乾燥地帯」
「低人口密度」
「既存送電網」
「大規模需要地への近接性」
という複数条件が重なった、世界的にも限られた“導入特異点”としての地理条件が、その背景に存在している可能性があります。
そしてこの構造は、California、United Arab Emirates、Chile北部、そしてIndia西部乾燥地帯など、世界の大規模太陽光地域とも一定の共通性を持っているように見えます。
出典:
REE(スペイン送電系統運用者) Installed Capacity Report