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経済産業省の作業部会、非化石証書でのアワリーマッチングについて議論を深める

GHG Protocol Scope2の改定案でアワリーマッチングの導入が示される中、日本においては、経済産業省が設置する委員会で、2025年後半から、GC-EACの要件にも通じるアワリーマッチングの導入の適否について活発な議論がなされてきました。

その結果は中間とりまとめとして整理され、現時点における方向性が示されました。そこでは、アワリーマッチング手法を直ちに導入するという結論には至りませんでしたが、今後検討を進めていく方向性が明確に示されました。また、中間とりまとめのパブリックコメントでは、アワリーマッチングの導入を主張する意見が示され、これに対して経済産業省の具体的な回答も示されました。このように、アワリーマッチングがその管理当局である経済産業省の委員会で議論されたのは異例であり、特筆すべきものと考えます。

そこで、本記事では、その議論内容を紹介し、将来の方向性を予測してまいります。(アワリーマッチング推進協議会:酒井直樹)

議論がなされた経済産業省の委員会

再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(ネットワーク小委)は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の下に設置された小委員会です。再エネ導入促進を担当する省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課の所管となります。

この委員会は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた施策、次世代電力ネットワークの構築、事業規律の強化、地域との共生、分散型エネルギーリソースの導入など、再エネ拡大と系統整備に関する幅広い政策的課題を議論する場となっています。

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また、その上部にある制度検討作業部会(作業部会)は、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会の下に設置された部会です。ベースロード市場や間接送電権市場、容量市場、需給調整市場、非化石価値取引市場という5つの電力市場の創設から詳細な制度設計、運用を通じた見直しやルール改定を実務的かつ専門的に議論する役割を担っています。

委員会における議論の内容

2025年6月3日に開催された第74回ネットワーク小委においては、長山委員から、RE100の条件が進化していく中で証書も追随していく必要があるとの指摘がなされました。

長山委員は「特にタイムスタンプなどの新しい概念が入ってきており、非化石証書に30分コマ単位や15分コマ単位で証明書を付加し、リアルタイムで100%再エネ達成に向けた証明として使えるようにする国際的な動きに合わせるべきだ」という趣旨を述べています。

これに対し事務局の日暮新エネルギー課長は、「頂いた指摘を検討し、脱炭素や電力価格の観点から最適な道行きを関係審議会と連携して課題整理していきたい」と回答しました。

また、これに続く2025年9月30日の第76回小委員会において、嵐委員は、「時間的な整合性や発電と消費の期間の紐付けなど、より細かな時間単位で見ていく形で証書を作り込み、需要家の支払い意欲を高めるメリットを明確にした上で、段階的かつ柔軟な調達環境の設計が望ましい」という趣旨を述べました。

ネットワーク小委での議論を踏まえ、10月29日に開催された第108回作業部会では、経産省事務局より、「GHG Protocolの見直し議論や非化石証書を巡る様々な情勢を注視しながら議論を進めたい」という趣旨の説明がありました。

また、「海外の仕組みが変わっていく中で日本も合わせていく話が具体化される可能性があるため、状況を見ながら利便性向上に取り組む」との発言もありました。

中間とりまとめにおける記述内容とその性格

中間とりまとめは、各市場の運用開始に向けた制度設計や運用を通して顕在化した課題を踏まえ、委員会等での討議内容をまとめたものです。

中間とりまとめはパブリックコメント手続を経て公表される公式な政策文書であり、今後の市場整備の方向性を示す羅針盤としての性格を持ちます。

この中間とりまとめにおいて、アワリーマッチングやタイムスタンプに関する議論は、非化石証書の利便性向上に向けてという論点に包含されました。

文書内では、トラッキング情報の拡充、証書の有効期限、非FIT証書の転売の可否などについて、海外における議論も踏まえつつ必要に応じて検討すると記述されています。さらに、国内外の事業環境等の変化の動向も踏まえて議論が行われることが望ましいとの課題整理もなされました。

パブリックコメントで出された意見と経産省の回答

また、同時期に議論が行われていた「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」のとりまとめ案に対するパブリックコメントにおいても、「GHGプロトコルの改定等に向けて日本としても取り残されることなく対応していくことが必要である」との意見が寄せられました。

具体的には、「世界で主流となりうるアワリーマッチングへの対応を考え、非化石証書へのタイムスタンプの搭載や系統用蓄電池を用いた生グリーンのタイムシフトの実現等を早急に検討すべき」とされています。

また、「非化石証書の利便性向上に向けて、非化石価値を長期間確保したい需要への対応として、先渡市場の創設や有効期限の延伸も有効である」との意見も出されました。

これに対して、経済産業省事務局からは、「GHG Protocol Scope 2 Guidanceの改定等、国内外の非化石証書や環境価値を巡る議論について引き続き注意を払っていく。アワリーマッチングへの対応などトラッキング情報の拡充や、有効期限といった非化石証書の利便性向上については、いただいた意見を参考にしつつ今後検討していく」という旨の回答がなされました。

今後の見通し

このように、経済産業省や有識者委員の間で、アワリーマッチングやタイムスタンプの導入について、その重要性や国際的な潮流を強く認識していることが明確に示されました。ただし、直ちに現在の非化石証書を含めた環境価値取引の市場設計に組み込んで義務化や制度化を行う段階にはないというスタンスも伺えます。

今後は、GHGプロトコルの改定やRE100の条件進化といった国際的なルール変更の確定状況を注視し、それらの事業環境の変化が国内の需要家ニーズに具体的にどう影響するかを見極めた上で、必要に応じて段階的にトラッキング情報の拡充やタイムスタンプの付与などの検討を進めていくことになると考えられます。

アワリーマッチング推進協議会では、引き続き世界各国での政策・規制フレームワークにおいて、GC-EACやアワリーマッチングがどのように導入されていくかについて分析を進めてまいります。