株式会社三菱総合研究所は、2026年4月20日、洋上風力発電を活用した国産グリーン水素の導入可能性と、エネルギーおよび経済安全保障の観点からコスト合理性を検証したレポートを発表しました。
本レポートでは、地政学的なリスクが高まる中、輸入依存度の高いエネルギー構造からの脱却手段として国産水素の価値を再評価しています。具体的には、2030年代以降の本格普及を見据え、変動性再生可能エネルギー(VRE)である洋上風力の余剰電力を活用した水素製造の経済的メリットを分析しているのが特徴です。
経済安全保障を考慮した新たなコスト指標の提示
従来のLCOH(水素製造原価)による単純な比較だけでなく、化石燃料の価格変動リスクや、サプライチェーンの途絶に伴う経済的損失を回避する「安全保障価値」を考慮すべきであると提言しています。
海外からの輸入グリーン水素と比較した場合、輸送コストや関税、通貨変動リスクを内包する輸入価格に対し、国産水素は初期投資後の運用コストが安定している点が強調されています。レポートによれば、国内の電力系統への接続制限を逆手に取り、送電網に流せない電力をその場で水素に転換することで、システム全体の効率化に寄与するとしています。
2030年代の本格導入に向けた技術的・政策的課題
国産グリーン水素の社会実装を加速させるためには、水電解装置の大容量化と、それに伴う設備利用率の向上が不可欠です。現在はまだ輸入水素に対して価格競争力で劣るものの、カーボン・コンプライアンス(炭素規制)の強化が進む国際社会においては、製造過程の透明性が高い国産水素の優位性が高まると予測されています。
今後は、洋上風力発電の導入加速と並行して、水素の貯蔵・配送インフラを地域単位で整備していく必要性が示されました。脱炭素化を産業政策として捉え、持続可能なエネルギー自給率の向上を目指すことが、中長期的な国家の経済成長に直結すると結論づけています。