三菱総合研究所(MRI)は、2026年4月20日、洋上風力発電を活用した国産グリーン水素のコスト合理性に関する調査レポートを発表しました。同レポートは、カーボンニュートラルの実現に向けた燃料脱炭素化の有力な選択肢として、国内で製造される水素の経済性と、エネルギー・経済安全保障の観点からみた多角的な価値を評価したものです。

今回の検証では、2026年2月に発生した中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰など、最新の地政学的リスクが反映されています。輸入に依存する化石燃料の価格変動や供給途絶リスクを考慮した場合、国内の再生可能エネルギーから製造される国産グリーン水素は、単純な市場価格の比較を超え、エネルギー自給率向上に寄与する「安全保障上の価値」を含めて一定の合理性を持つ可能性があると結論付けています。
経済安全保障と連動した水素コストの再定義
レポートでは、洋上風力発電を電源とするグリーン水素の製造コストについて、従来の平準化コスト(LCOH)の枠組みに、地政学的リスクへの耐性を加味して分析しています。安価な海外産水素の輸入はコスト面での優位性がある一方で、輸送経路の安全性や輸出国の情勢といった外部要因に左右されやすいという課題が指摘されました。
これに対し、国産水素は国内の風力資源や余剰電力を直接活用するため、国際情勢に翻弄されない安定的な供給体制の構築が期待できます。特に中東情勢の影響を強く受ける原油や天然ガスと比較した際、国産エネルギーとしての「供給安定性プレミアム」を考慮することで、経済的な妥当性が十分に認められるとしています。
脱炭素燃料の自給化に向けた提言
分析によると、洋上風力発電の導入拡大と水電解装置の大型化・効率化が進むことで、2030年代以降のコスト低減が加速する見通しです。レポートは、エネルギー転換期における燃料の脱炭素化を推進するためには、海外産との単純な価格差を埋める支援策だけでなく、国内供給網の構築そのものがもたらすリスク回避効果を正当に評価すべきだと論じています。
また、地方の風力資源を活用した水素製造は、送電網の混雑緩和や地域産業の創出にも繋がります。MRIは、安全保障と脱炭素の両立を図るためには、国産水素を国家戦略的な基幹インフラとして位置づけ、民間投資を促す制度設計が不可欠であるとの見解を示しました。