出光興産は2026年1月29日、次世代電池の本命とされる全固体リチウムイオン二次電池のキーデバイスである「硫化物系固体電解質」を製造するための大型パイロット装置の建設を開始したと発表しました。本設備は千葉事業所内(千葉県市原市)に建設され、商用化に向けた量産技術の確立と品質向上を目的としています。
今回のプロジェクトは、同社が長年培ってきた石油精製プロセスから派生した硫化水素の制御技術を活用したものです。これまで稼働していた小型装置による試験段階から、より実用に近い生産規模へとフェーズを引き上げることで、2020年代後半の商用化を目指す市場供給体制を盤石にする狙いがあります。
トヨタ自動車への供給を主眼に置いた量産実証
新設される大型パイロット装置で製造された固体電解質は、トヨタ自動車が開発を進めている電気自動車(EV)用全固体電池に採用される予定です。両社は2023年に全固体電池の量産化に向けた協力関係を構築しており、今回の起工はそのロードマップを具体化する重要なステップとなります。
全固体電池は、従来の液系リチウムイオン電池と比較してエネルギー密度が飛躍的に高く、充電時間の短縮や航続距離の延長が可能となります。トヨタ自動車が計画している2027年から2028年の市場投入を見据え、出光興産は高純度かつ安定した品質の電解質を供給するためのプロセス開発を加速させます。
石油精製技術を次世代エネルギーへ転換
出光興産は、全固体電池の材料開発を中期経営計画における「成長領域」の一つと位置づけています。硫化物系固体電解質は、イオン伝導性が極めて高い一方で、水分に反応しやすい性質を持つため、製造工程における高度な環境制御が不可欠です。
同社は、これまでに培った化学合成技術とプラント運用ノウハウを結集し、低コストかつ効率的な生産手法を追求します。なお、この事業は経済産業省のグリーンイノベーション基金事業に採択されており、産官学の連携を通じた日本の蓄電池産業の競争力強化という側面も併せ持っています。