2026年1月14日 · GHG Scope2,質高再エネ,電力脱炭素,非化石証書とScope2改定,アワリーマッチング
GHGScope2ガイダンスの改定の中核となる、アワリーマッチング手法の導入を主導する国連UN 24/7Cは、2026年1月14日アワリーマッチング証書取引の指針を加盟者向けニュースレターで公表しました。
本ガイドラインは、非化石電源による発電を「いつ・どこで・どのように」消費と結び付けるかを、制度・データ・証書の観点から整理した初の公式文書です。
全体構成は、①24/7CFEの基本原則、②時間・地域・技術中立性、③追加性、④トラッキングと報告、⑤規制・市場環境という流れで構成されています。
その中で、アワリーマッチング証書取引について具体的な手法を解説しています。これは、EnergyTagのスタンダードを基に作成されています。
マッチング・スタンダード(Matching Standard)
ガイドラインはまず、「主張(Claim)が許容されるのは、発電から消費までの電力フローが追跡・照合できる場合に限られる」と明確に述べています。
その際、属性情報はエネルギー属性証書(EAC)または法的契約によって管理されるとされ、例示としてEnergyTagによるグラニュラー証書(GC)スキームが紹介されています。
証書に必須とされる標準情報
GCには、最低限以下の情報が含まれる必要があるとされています。
* 電源種別 * 発電事業者名 * エネルギー量の単位 * 発電地点(地理情報) * 発電日時(時間粒度) * 証書発行日
これにより、従来の年次・月次証書では不可能だった「時間的整合性」が担保されます。
ダブルカウント防止と責任分界
次に、証書および主張の二重計上を排除する厳格な基準を定義しています。 単に証書を発行するだけでなく、発行・移転・取消の各段階で責任主体を明確にし、検証可能な形で管理することが前提です。
グラニュラー・マッチングにおける役割分担
ガイドラインは、GCスキームを以下の二段階に分けて整理しています。
① 発行(Issuance)段階の役割 * 発電事業者(Producer) * 発電量計測主体(Production Measurement Body) * GC発行者 * GCレジストリ運営者
② マッチング(Matching)/取引段階の役割 * 消費者または供給者 * 消費量計測主体 * マッチャー(時間・地域条件に基づき照合) * クレーム検証者 * (製品検証主体)
ここで重要なのは、各役割は責任を負う独立主体でなければならないと明記されている点です。
発電データ、消費データ、証書データは相互に接続されますが、単一主体による一貫支配は想定されていません。
クレディビリティと透明性――「利益相反の排除」が国際標準 さらに、制度運営におけるガバナンス要件が詳細に示されています。 特に強調されているのが、利益相反の排除です。
ガイドラインでは明確に、「証書発行者」および「クレーム検証者」は、電力の買い手・売り手を兼ねてはならないと規定しています。
これは、24/7CFEの信頼性を担保するうえで最も重要な原則の一つです。
役割の組み合わせに関する整理 表形式で示されている整理では、マッチャーは消費者・供給者になれない、クレーム検証者は消費者・供給者になれない、マッチャーはGC発行者およびクレーム検証者を兼ねてはならないと、明確な分離原則が示されています。
規制当局・監査人への開示 さらに、トラッキングシステムは、規制当局や監査人がアクセス可能でなければならず、既存の再エネ証書制度で培われたガバナンスやデータプライバシーのベストプラクティスを踏襲すべきだとされています。
日本の非化石証書を用いたシステム改良の在り方について
本ガイドラインは、EnergyTagのグラニュラー証書構想を「一例」としつつも、「国や地域の文脈に応じて、異なる制度設計があり得る」ことを明記しています。
これは、単一の欧米モデルを世界に押し付けるものではなく、世界のルールの最大公約数として「考え方と要件」を示した文書であることを意味します。
日本への適用は?
日本には、非化石証書やJクレジットにおいて、すでに独自のトラッキングシステムと制度運用の蓄積があります。
これらを活かしながら、発電・消費データに時間情報を付与し、アワリーマッチング型証書として再構築していくことは十分に可能です。
例えば、英国NESOではこのスキームでのFSを欧米システムプロバーダーに委託して実施していることはご案内したとおりですが、そのようなシステムをそのまま日本に持ち込むのではなく、日本の電力市場構造、データ基盤、制度運用を踏まえた形で、わが国の既存ステークホルダーの手によりアワリーマッチング証書取引システムを設計・開発することが、サービス収支赤字の解消や、データセキュリティを含めた経済安全保障の観点から重要と言えるでしょう。
当社は、公的機関には無償でベンダーフリーのアドバイザリーサービスを提供しています。こうした日本での制度・システム設計に貢献させていただければ幸いです。