日立エナジーは、2026年4月22日、インドの大手インフラ事業者であるアダニグループと共同で、ムンバイ都心部へ電力を供給する高圧直流送電(HVDC)システムの運転を開始したことを発表しました。本プロジェクトは、約50kmの地下ケーブルを活用し、郊外から2,000万人以上が居住する都市部への電力供給能力を約50%増強するものです。
インドは現在、急速な経済成長の途上にあり、広大な国土における送配電網の拡充が国家的な課題となっています。インド政府の予測によれば、同国の電力需要は今後10年で倍増する見通しであり、日立製作所や東芝といった日本企業が、その高度な技術力を武器にインフラ市場で重要な役割を果たしています。
HVDC(高圧直流送電)の仕組みと優位性
HVDCとは、交流の電力を一度直流に変換して送電し、受電側で再び交流に戻す技術です。一般的な交流送電と比較して、送電時の電力損失が大幅に少なく、長距離かつ大容量の電力を効率的に運べる点が最大の特徴です。
また、地下ケーブルや海底ケーブルでの送電距離に制約が少ないため、今回のように用地確保が困難な大都市圏への直接供給に適しています。ムンバイの事例では、省スペース型の変換所を採用することで、都市部特有の制約を克服しながら、遠隔地の再生可能エネルギーを効率的に統合するモデルケースを提示しています。
日本におけるHVDC導入と技術展開への期待
日本国内においても、HVDC技術は電力系統の強靭化に向けた切り札として注目されています。現在、再生可能エネルギーの適地である北海道から需要地である本州(東京圏)へ、海底部を含む約数百キロメートルを結ぶ大規模なHVDC連携線の導入が計画されています。
電力供給の安定化と脱炭素化を同時に進める上で、HVDCは不可欠な基盤技術です。インドでの成功実績は、日本の「重電」技術が世界市場のデファクトスタンダードを牽引していることを裏付けるものであり、今後も複雑な系統運用が求められるグローバル市場において、さらなる飛躍が期待されています。