東芝エネルギーシステムズは、2026年4月23日、温室効果の高い六フッ化硫黄(SF6)ガスを一切使用せず、自然由来ガスのみを用いた「300kVガス絶縁開閉装置(GIS)およびガス遮断器(GCB)」の基本性能を研究所レベルで確認したと発表しました。これにより、2028年度中の製品化に向けた開発が大きく前進することになります。
GISは、送電系統の異常時に電流を遮断するGCBや断路器などで構成され、変電所の心臓部を担う設備です。従来、大電力を扱う高電圧機器では、優れた絶縁性能を持つSF6ガスが不可欠でしたが、その地球温暖化係数はCO2の約25,000倍と極めて高く、代替技術の確立が世界的な急務となっていました。東芝は、自然界に存在するガスを適用することで、高い環境性能と送電網の安定性を両立させる方針です。
データセンター需要と世界的な送配電投資の激増
現在、世界的なAIブームに伴うデータセンターの建設ラッシュや再生可能エネルギーの導入拡大を受け、送配電システムへの投資が「特需」とも呼べる規模で膨れ上がっています。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2040年までに世界全体で約8,000万キロメートルに及ぶ送電網の更新・拡張が必要とされ、その投資額は年間6,000億ドル(約90兆円)規模に達すると見込まれています。
特に北米では老朽化した既存網の更新、東南アジアやインドでは急速な電化に伴う新設需要が突出しており、300kVクラスのGISは電力系統の基幹を支える製品として、空前の引き合いを見せています。長いデフレ下で厳しい経営環境に耐えてきた東芝、三菱電機、日立製作所といった日本の重電各社にとって、この特需は「アナログ」な重厚長大製造業が再び世界市場の主役に躍り出る絶好の機会となっています。
日本の技術優位性とサステナビリティの融合
日本のGIS技術は、限られた土地に変電設備を構築するための「小型化」と、地震大国ゆえの「高信頼性」において、世界的に圧倒的な競争力を有しています。東芝が進める脱SF6ガスの技術確立は、この強固なアナログ技術に「サステナビリティ」という新たな付加価値を上書きするものです。
データセンターを運営するGAFAなどの巨大テック企業は、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを厳格に求めており、環境負荷の低い送変電機器へのニーズは極めて切実です。環境規制が先行する欧州市場のみならず、北米やアジアにおいても「脱SF6」は受注の必須条件となりつつあります。東芝による自然由来ガス機器の製品化は、日本の重電産業がグローバルなGX(グリーン・トランスフォーメーション)特需を盤石なものとし、再成長を遂げるための道筋を決定づけるものと期待されています。
出典:https://www.global.toshiba/jp/news/energy/2026/04/news-20260423-01.html