欧州ガスインフラ協会(GIE)が2026年1月20日以降に順次更新しているデータによれば、欧州連合(EU)域内の天然ガス貯蔵率は1月下旬時点で40%台前半まで低下し、エネルギー危機の影響が色濃かった2022年同時期以来の低水準を記録しました。例年、同時期の貯蔵率は60%から70%台で推移することが多い中、今冬の異例な取り崩しペースが市場に緊張感をもたらしています。
記録的な寒波と暖房需要の急増が直撃
2026年1月に入り、欧州全域を襲った激しい寒波が状況を悪化させました。特にドイツやフランスなど主要消費国での暖房需要が爆発的に増加し、1日あたりの貯蔵引き出し量が過去数年の平均を大きく上回るペースで推移しています。ドイツの貯蔵率は1月25日時点で約37.5%まで下落しており、前年同月の62%と比較してもその減少幅は顕著です。
また、欧州委員会は2025年9月に冬期開始時の義務的貯蔵目標を従来の90%から75%へと引き下げていました。この規制緩和により、今冬のスタート時点での在庫が例年より少なかったことも、現在の低水準を招いた一因と指摘されています。
LNG供給への依存と地政学的リスクの再燃
パイプライン経由のロシア産ガス供給が制限される中、欧州は米国産を中心とする液化天然ガス(LNG)への依存を強めています。しかし、国際的なLNG需給のバランスが崩れる中、アジア諸国との買い付け競争や、紅海情勢など地政学的緊張に伴う輸送ルートの不安定化が、欧州への安定供給に影を落としています。
市場では、オランダTTF(天然ガス価格指標)が年初から30%近く急騰する場面も見られました。シンクタンクの分析では、今後10週間程度の冬期が続く中で貯蔵量がさらに減少する可能性が高く、2026年春以降の在庫再充填フェーズにおいて、価格が高止まりするリスクが懸念されています。
加速する「2022年再来」への警戒感
現在の貯蔵レベルは、ロシアによるウクライナ侵攻直後のエネルギー不安がピークに達した2022年以来の深刻な状況にあります。EU当局や各国政府は、産業界および家庭に対してエネルギー消費の抑制を改めて呼びかけていますが、低気温が長期化すれば供給制限を含む緊急措置が必要になる可能性も否定できません。
エネルギー専門家らは、今回の在庫減少が単なる季節要因にとどまらず、欧州のエネルギー安全保障構造がいかに外部環境の変化に対して脆弱であるかを改めて浮き彫りにしたと評価しています。今後、次年度に向けた在庫確保のために、欧州諸国によるLNGの争奪戦が激化することが予想されます。
出典:https://thinkeuropa.dk/en/explainer/2026-01-eu-natural-gas-prices-and-storage-status