長崎県五島市は、洋上風力発電と地域産業である漁業との共創を実現した国内屈指の成功事例として知られています。
その核心は、市役所が中立的な立場からコーディネーターとなり、漁業関係者、風力発電事業者、そして市民を繋ぐ強固なコンセンサスを醸成した点にあります。
市は協議会を通じて対話を重ね、漁業への影響を最小限に抑えるだけでなく、風車周辺を魚礁として活用する研究や、工事・メンテナンスに地元企業を優先的に登用する仕組みを確立し、地元に資金が還流する構造を築き上げました。
さらに、地域新電力である「五島市民電力」を通じて、市内で発電した再生可能エネルギーを地元で消費する「地産地消」モデルを構築したことは、エネルギーの自立と経済活性化を両立させた将来像の一つとして高く評価されています。
三菱総合研究所:洋上風力と漁業の未来共創に向けた11の提案
こうした状況を巣前、三菱総合研究所(MRI)は、2026年4月20日、洋上風力発電と漁業の持続的な共生を目指す施策をまとめたレポート「洋上風力と漁業の未来共創に向けた11の提案(第2版)」を発表しました。本レポートは、2025年4月に公表された第1版に対し、漁業関係団体や有識者との意見交換を経て得られた知見を反映した改訂版です。関係者が担うべき役割や、事業推進にあたって議論すべき重要論点、それらに対する具体的な解決策が整理されています。

今回の第2版で新たに追加された特筆すべき項目は、海底ケーブルと漁業共生に関する具体的な提案です。洋上風力で発電した電力を陸送する海底ケーブルの敷設は、漁具の接触や操業範囲の制限など、漁業者にとって大きな懸念事項となります。レポートでは、ケーブルの埋設深度や防護措置の基準策定において漁業者との合意形成を前提とすることや、トラブル発生時の責任の所在、迅速な補償体制のあり方について踏み込んだ議論を求めています。MRIは、洋上風力を単なる電源開発として捉えるのではなく、漁村の維持発展を含めた「海の総合的な利用計画」へと昇華させるための制度設計を重視するとしています。