財務省は2026年4月22日、2025年度および2026年3月分の貿易統計(速報)を発表しました。わが国の貿易収支は1兆7145億円の赤字となり、5年連続の赤字を記録しています。
世界全体の輸出総額は、台湾向けの半導体製造装置などが堅調に推移したことで、前年度比4.0%増の113兆2423億円と過去最高を更新しました。しかし、輸入総額もプラチナをはじめとする非鉄金属の価格上昇などにより、0.5%増の114兆9568億円に拡大しています。この結果、輸出から輸入を差し引いた収支は赤字が継続したものの、赤字幅そのものは前年度から約7割縮小したとしています。
米国向け輸出が5年ぶり減少、対米関税措置が影を落とす
対米国貿易においては、輸出額が前年度比6.6%減の20兆2091億円となり、5年ぶりのマイナスに転じました。特にトランプ政権による高関税措置の影響が色濃く、主力の自動車輸出が15.9%と大幅に落ち込んだことが全体を押し下げました。一方で、米国からの輸入額は原油などのエネルギー資源を中心に4.3%増の13兆2103億円となり、2年連続で増加しています。
この貿易構造の変化は、日本の稼ぎ頭であった対米黒字を22.1%減少させ、6兆9988億円にまで縮小させました。米国市場における関税障壁が日本の製造業、とりわけ自動車産業にとって大きな逆風となっていることが鮮明になっています。
ホルムズ海峡緊迫で原油高、エネルギー由来の円安加速へ
今後の懸念材料は、イランによるホルムズ海峡封鎖という地政学リスクに伴うドル建て原油価格の上昇です。2026年3月の統計でも原油の輸入量は前年同月比2.4%増と増加傾向にあり、供給網の寸断は輸入コストをさらに押し上げる要因となります。原油価格の高騰は、実需面からのドル買い・円売りを誘発し、さらなる円安を招くという悪循環を生み出しています。
輸入物価の上昇は、日本の貿易収支を一段と悪化させるだけでなく、国内のエネルギー価格へ直結します。原燃料費調整制度を通じて電気料金のさらなる高騰を招く恐れがあり、企業活動や家計への負担増が日本経済全体の景気下押し圧力となることが強く懸念されます。
原油と為替の相関変化、「正の相関」が招くコストプッシュ
こうした中、注目すべきはドル建てWTI原油価格とドル円レート(USD/JPY)の相関関係の変化です。かつては世界経済の先行き不安時に「安全資産」として円が買われたため、原油高局面でも円高が進む「負の相関」が見られることが一般的でした。しかし、近年の日本経済はエネルギー輸入依存による構造的な貿易赤字が定着しており、原油価格の上昇がそのまま円売りを誘発する「正の相関」へと変質しています。
原油価格が上昇すると、輸入企業の決済用ドル需要が急増し、為替市場では円安が進行します。この「原油高・円安」の同時進行は、輸入コストを二重に押し上げる「ダブルパンチ」として日本経済を直撃します。現在のドル建てWTI価格の高騰は、もはや単なるエネルギー価格の問題に留まらず、通貨価値の下落を通じて、電気料金や生活必需品全体の価格引き上げを加速させる極めて深刻な局面を迎えていると言わざるを得ません。
電力セクターは、エネルギー安全保障の確保、脱炭素化に向けた再エネ導入と、電気料金高騰抑止の3つの課題を背負っています。それぞれを別個に論じるのではなく、その一体的な解決策について、定量的・実体的な検討が求められていると言えるでしょう。
出典:https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2026_03.pdf