はじめに
非化石証書とScope2改定の第4回は、「非化石証書を時間別にすると取引価格はどうなるのか?」について英国NESO報告書(2025年)から考えてみたいと思います。
英国NESO FSが行った取引実証
前回のNESO(National Energy System Operator)報告書は、時間帯別のEACが実際にどのように取引されるかについてのFSの結果を分析しています。
我が国の非化石証書が時間帯別になった場合、
GC(Glanular Certficate)証書(以降GC-非化石証書と呼ぶことにします)は、現行の年間ベースの非化石証書に比べて、約定単価・約定量とその積としての市場取引量はどうなるのか?
が最も重要な論点の一つとなるでしょう。
そこで、NESO実証の結果を参考にしてこの点を考察します。
NESO実証では、売り注文と買い注文はブラインドオークションでマッチングされ、約定価格が決定されています。
市場運営者の主な役割は、以下のようにメリットオーダーに基づき、供給曲線と需要曲線の交点を設定することで、価格と数量が交点の左側に位置する売り手は、そのポジションが清算されます。同様に、価格と数量が交点の左側に位置する買い手も、そのポジションが清算されます。
NESO実証では、注文はスプレッドシート経由で提出され、取引パイロットに含まれる各月(2024年2月および2024年5月)に、1時間あたり最大5段階の価格設定が行われました。注文には価格と数量の両方が含まれます。
オークションを行ったところ、75%がマッチングされ、その約定価格の最高値が跳ね上がりました。一方で、多くの時間帯では、値段が付かない状況になっています。
英国でも日本と同様に太陽光発電が主流ですので、昼は圧倒的に供給超過、夜は反対に需要超過となり、一部の時間帯では売り注文が極少のことろに買い手が殺到し価格スパイクが起きるというのは、当社が日本の環境省実証で行った結果と同じです。
NESO実証では、2月のテストオークションにおける「GC-非化石証書」の約定価格の分布は以下の通りです。
NESO報告書ではこの結果を以下のように分析しています。
- 認証書購入コストはアワリーマッチング率目標に比例して増加し、消費量の約75%が認証書でカバーされるところで臨界点を迎える。
- 限界費用は、需要の特定割合を認証書でカバーするためのコストを示す。例えば50%の場合、認証書の限界費用は20ポンド/MWhとなる。
- 平均調達コストは、特定の証明書カバー率を達成するための加重平均単価を示す。例えば50%の場合、すなわち、上記グラフの左側50%以下の領域は9.1ポンド/MWhである。
- 需要家のプレミアムは、当該需要をカバーする証明書の平均コストとなる。
一方で、証明書価格と電力価格の価格持続曲線は様々な要因で変動します。以下は、「GC-非化石証書」と電力量単価を足し合わせた「生グリーン電力の単価」を示します。
灰色が電力量単価で緑がGC-非化石証書価格です。
電力それ自体に比して、「GC-非化石証書」の方が価格弾性値が明らかに高いことがわかります。当社の国内実証でも、電力の価格弾性値は圧倒的に低く、一方でアワリーマッチングが100%でない限りにおいては、GC-非化石証書がスパイクする時間帯には購買を避けるために弾性値が一定程度で収斂することがわかっています。
NESO実証に戻って、アワリーマッチング率目標が75%未満ではグリーンプレミアムは相対的に小さくなり、75%以上となると証明書が電力を含めた「生再エネ電力価格」の多くの割合を占めるようになるのがわかります。 特に重要な視点は、「GC-非化石証書」価格と電力価格は一定程度相関するものの、完全ではないということです。
興味深いのは、供給が需要に対して不足する状況では、高EAC価格と高電力価格が同時に発生することが多いが、常にそうとは限らないという点です。 例えば、ピーク需要時間帯は電力価格が高くなるが、風が強い日のピーク時にはEAC価格がゼロになることが多いし、午後11時から午前5時までの低需要時間帯は電力価格が低くなる傾向があるのですが、太陽光発電が利用できず、一定のベースロード供給が維持されるため、EAC価格が高くなる場合があります。
つまり、当社が考えるに、火力発電を含めた電力の需給は、生再エネ電力の需給と相関するが、その供給バランスは異なるということが導かれるということです。
株式会社電力シェアリングが受託した環境省実証の実施内容
株式会社電力シェアリングでは、これに関連し、2018年度から環境省から委託を受け、以下を本旨とする実証を実施してきました。
地域再エネの普及モデルの実証 地域再エネの有効活用と、遠隔地域への送電によるロス率低減・ボトルネック解消(追加送電網投資の回避)を図るため、需要家個人と、需要家が属する各地域全体夫々の需要家側アワリーマッチング率(電力消費において、地域プロシューマが自家消費最大化努力を講じてもなお余剰となる再エネ電力をどの程度活用しているか(地産率)を測定する指標)を用いて、その向上により、地域分散電源の需給一体化を集団で促すBI-Tech・ビジネスモデルを検討しています。
電管協ビッグデータを用いて、一般電力需要家(プロシューマを除く)の電力消費が、同一グリッド内のプロシューマとどの程度アワリーマッチングが可能か(需要家側アワリーマッチング率:地産率)、また、再エネ発電出力制御回避とCO2削減にどの程度貢献しうるか、について定量分析し、その汎用性と特異性について検証しています。
①マーケット基準(取引効率性):再エネ価値取引実証として実施:需要家アワリーマッチング率と再エネ出力停止回避量の最大化を促す観点から、電力消費前の再エネ価値購買(取引)を促すナッジモデル・ビジネスモデルを考案しています。
②一般需要家の行動変容による(a)地域電力小売事業者向け再エネ需給一体化支援事業、(b)地域配電用ライセンス(マイクログリッド)(地域アグリゲーター事)事業、(c)自治体排出量カルテに、住民等の電力地産地消に関わるCO2排出量を自治体に提供する事業についてのビジネスモデルと計画を考案しています。
③ 同モデル・事業が、2030年度に2013年度比66%(家庭部門)削減にどの程度貢献しうるかについて、定量的かつ合理的に精緻な分析モデルを構築し、シミュレーションを行い、2030年までのCO2削減の費用対効果を分析することとしています。
最後に
今後、こうした「GC-非化石証書」の検討が進むにつれ、こうした取引シミュレーションが行われることになると思いますが、英国NESO報告書や当社の実施した実証結果を是非参考にしていただければ幸いです。 次の記事に続きます。
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(参考リンク)
英国NESO(National Energy System Operator)報告書
Implications of Trading of 24/7 Carbon Free Energy (CFE) on Electricity System Operation https://www.neso.energy/document/365496/download?utm_source=chatgpt.com